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はじめに
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日本分類学会連合は,分類群の垣根をこえて,微生物から動植物,ヒトに至るきわめて多様な全生物を対象に,しかも地球規模で分類学の研究をすすめることを目指して,ちょうど2年前(2002年1月12日)に設立されました.2004年1月現在,27の学会が加盟しています.これらの学会が連合することによって,分類学の研究の発展とその普及をかつてないスケールで切磋琢磨できるようになりました. 本連合は昨年のシンポジウムで,「日本の生物はどこまでわかっているか−既知の生物と未知の生物」と「ヨーロッパが所蔵する日本産生物タイプ標本−日本の生物多様性研究発展の鍵」をテーマにしました.地球上の各地域や生物圏にどれほど多種多様な生物が存在しているかを知ることは,生物学の大きなテーマであるばかりでなく,食料,医薬,エネルギー,住居,大気(酸素やオゾンは植物の光合成産物である)など,われわれの生活に直結する生物資源としての利用を図るためにも非常に重要であります.にもかかわらず,生物の種についての理解は,残念ながら未だきわめて不十分であると言わざるを得ません.我々は,生物の種に関する研究の経過とその現状を知り,今後それを進展させるための指針を得るために,このようなシンポジウムを開きました(「生物科学」55巻2号参照). 今回のシンポジウムのテーマとなっている「移入種によってひき起こされる生物多様性の撹乱や遺伝子汚染」の問題と,「生物の新種記載」をめぐる問題も分類学研究者が直面している重要な課題であります.とりわけ,「移入種」に関わる問題は,我々人類の生活基盤でもある生物多様性を脅かす存在になってきています.生物多様性を保全し,健全な利用を図ることは容易ではありません.しかし,今世紀の人類が必ず解決しなければならない問題でもあります.その解決に向かって,我々分類学研究者の果たすべき役割は決して小さくはありません.生物多様性の解明に必要なデータを示し,我々の考えを強く主張することが求められていると思います. 2004年1月10日 日本分類学会連合 前代表 加 藤 雅 啓 (東京大学大学院理学系研究科) 新代表 松 浦 啓 一 (国立科学博物館動物研究部) |
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