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移入種(外来種)対策について

上 杉 哲 郎

環境省自然環境局生物多様性企画官

1.経緯

 「新・生物多様性国家戦略」(平成14年3月)において,外来種問題は我が国の生物多様性の危機の一つと位置付けられ,「規制改革推進3ヶ年計画」(平成15年3月)において法制化も視野に検討するとされ,これらを踏まえ,平成15年12月,中央環境審議会より,「移入種対策に関する措置のあり方について」環境大臣に答申がなされた.

2.問題に係る基本認識

 外来種(亜種又は変種を含む.)は,ある地域に人為的に導入されることにより,その自然分布域を越えて生息又は生育することとなる種として捉えられる.生物学用語との整合の観点から,審議会報告では,「移入種」ではなく「外来種」を用いることとなった.生物多様性等への影響を生じさせる外来種は,自然状態では生じ得なかった影響を人為的にもたらすものとして問題となっており,とくに侵略的な外来種といわれる.分類に関する科学的知見が明治時代以降に整理されてきたことなどを踏まえ,審議会報告では,原則として明治維新以降に導入された生物種は外来種として捉えることとしている.

3.外来種対策の考え方

 生物多様性条約の「指針原則」における「侵略的な外来種の侵入の予防」,「早期発見・早期対応」,「防除(影響緩和)」は,我が国でも外来種対策の考え方の基本となる.

? 国民に対し,外来種対策の基本認識や施策推進の基本的考え方についてわかりやすく示す.

? 新たに外来種を持ち込もうとする者に生態等の情報を提出させ,国が専門家の意見を踏まえ生物多様性等への影響の可能性を判定する.既に我が国で確認されている外来種も判定する.悪影響種の輸入は,適正な管理ができることを公的に確認した者以外は認めない.

? 悪影響種の個体を利用しようとする者に対し,適正な管理ができる施設や能力を有するか公的に確認するとともに,利用状況の確認を行う.その際,個体識別等を講ずる.

? 状況を監視し,問題が生じた場合には緊急的な防除など早期の対応がとれるようにする.非意図的な導入による侵略的な外来種の監視方法に関して検討する.

? 既に野外に定着し問題を生じている外来種について,国が全国的な観点から,地方公共団体が地域の実情に応じて,防除実施計画を策定する.関係者の合意形成と参画を進める.

? 国立公園など特に保全が必要な地域に関しては,別途,当該地域への外来種の放出等の規制や防除等に係る特別な管理ができるようにするための措置を検討する.

? 国民に普及啓発を図るとともに,各種教育機関とも連携し教材整備や人材確保を図る.

? 外来種に係る基礎的な調査研究を進め,防除や監視に係る技術開発を推進する.

4.制度化及び対策の実施に当たって配慮すべき事項

? 科学的知見,実施体制等を勘案の上,優先度の高いものから早急に措置を講ずる.

? 関連する諸制度等と連携・協力体制を構築し,総合的に効果的な対策を推進する.地方公共団体における地域の実情に応じた外来種対策に対し,国として必要な支援を行う.

? 対策の実施に際しては,生物の習性を考慮した適正な取り扱いを行う.

? 輸入に関する制度を検討する際には,WTO協定との関係について留意する.